【ミニレクチャー】慶應義塾大学・武田篤也先生ご講演

2026年06月10日

5月29日(金)、慶應義塾大学の武田篤也先生をお招きし、放射線治療カンファレンスルームにてご講演いただきました。
演題は「肺癌定位照射の到達点と未来 ~治療医として次に挑むこと~」。肺癌定位照射についてのお話に加え、SDM(Shared Decision Making:共同意思決定)についてもご講演いただきました。
肺癌定位照射を、突き詰め突き詰めて現在に至る武田先生は、定位照射に関する非常にマニアックな情報(きっと武田先生ご自身は「全然マニアックではない」とおっしゃるのかもしれませんが)を、誇らしい治療成績とともにご教示くださいました。こんなにも強力な武器が私たちの手の中にあるという事実は、大きな誇りであると同時に、その武器を正しく使いこなせるよう学び続けなければならないことを改めて痛感いたしました。
後半ではSDMについてお話しいただきました。
「ガイドラインとは最適な治療を示すものではなく、SDMを支援するためのツールに過ぎない」
というお言葉には、日々それを実践する立場としての重みを感じました。
その後の懇親会は、いろりが印象的な山梨の郷土料理店で行われました。
とにかく定位照射を考え続けてこられ『The SBRT Book』というバイブルを世に送り出したレジェンド、そして「肺定位BED 100 Gyの男」とが、仲良くほうとうを召し上がる光景はなかなか貴重なショットでした。
改革を成し遂げてきた自負のある維新の志士に例えるなら、勝海舟と坂本龍馬が語り合っているような――そんな現代版の一幕とでも言いましょうか。
講演や懇親会の中で武田先生は、

「大西先生は放射線治療の生物学的優位性を基盤にして議論されている。自分はそういった基盤がないから、外科的発想から切り込んでいくだけなので、大西先生のような視点も学びたい」

とご謙遜されていました。
しかし、違った切り口を持つお二人の何気ない会話の端々からは、同志として共有する定位照射への熱い情熱が感じられました。
また、放射線肺炎の高リスク患者さんへのクラリスロマイシン投与についても、非常に興味深く拝聴しました。その背景や実臨床での考え方について、ざっくばらんにお話を伺うことができました。
さらに、他科や多職種との関わりについてのお話からは、武田先生が常に相手をよく観察し、愛情のある眼差しで人と接しておられることが伝わってきました。
「医師は究極の水商売。患者さんのニーズを、診察室に入ってきてからの短い時間の中でしっかり汲み取らなければならない。SDMも押し売りになってはいけない」
というお言葉は非常に説得力があり、深く心に響きました。
その姿勢は患者さんに対してのみならず、他科や他職種との関わり、さらには職業人としての在り方にも通じるものだと感じました。
武田先生、はるばる山梨までお越しいただき、誠にありがとうございました!
山梨静岡放射線治療研究会でのご講演も、一同、心より楽しみにしております!

文責)秋田知子

 

*今回の武田先生の来訪では、講演会に加え、山梨大学と慶應義塾大学が共同で進めている研究の打ち合わせも行われました。本研究では、Ⅰ期肺癌患者さんの治療選択を支援するDecision Aid(意思決定支援ツール)の開発と、それを用いたShared Decision Making(SDM:共同意思決定)の有効性検証に取り組んでいます。当日は、呼吸器内科・呼吸器外科・放射線治療科の研究コアメンバーが集まり、研究の進捗状況や今後の展開について意見交換を行いました。

(左より:内田先生 [当院呼吸器外科]、武田先生、松田先生 [当科]、齊木先生 [当院呼吸器内科])