第44回日本磁気共鳴医学会大会にて講演・発表

2016年09月12日

大宮で行われた日本磁気共鳴医学会大会に参加しました.今回山梨からは,放射線科医による発表6演題,医学部学生から1演題,放射線技師から2演題の発表がありました.

そのほか,私が企画進行を務めさせていただいたMRエラストグラフィのシンポジウムでは市川新太郎先生が臨床応用の発表をしました.

今年も,学会に参加した施設の中では,特にアクティビティの高い施設のひとつであったと思っています.

今年は,学生の森優希さん,放射線科1年目の松田先生,佐々木先生が発表しましたが,いずれの発表も素晴らしい出来でした.おそらく十分に準備,練習したのだと思います.とても誇らしく思いました.

今回は膝関節のMRIが専門の新津先生(埼玉医大)が大会長であり,1日目に関節MRIのすべてというシンポジウムが組まれておりとても印象的でした.プログラムはとてもバランス良く配置されていて誰もが楽しめる内容になっていたと思います.

個人的には学会関連の委員会や打ち合わせが多く入ってしまい,会場でのディスカッションに参加することができなかったのが残念ではありました.ただ逆に言えば,今後の山梨大での研究を広げるための布石を打ってきたことは大きな収穫であったと言えます.もっとも大きな収穫は,今回のMRエラストグラフィのシンポジウムで講演してくださった,Dr. Ehman (Mayo Clinic, Rochester, MN, USA) とは,今後の共同研究の方向について話し合うことができたことです.道筋はついたのですが,実際に見た方が良いと言われたので,今年のRSNA の後にMayo Clinic を訪問させてもらうことにしました.

研究にもっとも必要な要素は「人」です.もちろんアイデア,施設,資金も必要です.しかし,有能でアクティブな人がいなければどのような研究も成し遂げられることはありません.Dr.Ehmanは,多くの有能な研究者(理学系・工学系の両方)を集めて,MRエラストグラフィを開発し,臨床に根付かせることに成功しました.MRエラストグラフィの開発には,様々な要素が必要です.測定対象物(患者さん)に振動を伝えるための加振装置の開発は工学系の研究者の力が必要です.加振装置と同期したMRシークエンスの開発には,MRI撮像技術開発の専門知識を持ったいわゆるMR研究者が必要です.得られた画像を弾性率に変換するには,いろいろな弾性率の物理モデルを用いて,測定された雑多な情報から必要な情報を抜き出して計算させます.ここには動態力学の知識を持った研究者が必要です.Dr. Ehman 自身がすばらしい研究者であることに違いはありませんが,彼の仕事がこれだけ花開いたのは,各分野のスペシャリストを集め,全員が一つの目標に向かって力を合わせた結果であると言えます.そして(今回の講演によると),彼らの研究はさらに広がりを見せています.他臓器への応用や計算できる物理量を増やす方法などは聞いていてワクワクするアイデアでした.特に,Mayo Clinic では脳への臨床応用はすでに始まっており,近い将来世界中でも多くの研究がなされていくものと思われます.

Dr. Ehman のラボは,誰もがお手本にしたいと思えるすばらしい研究室のモデルです.もちろん日本の現状では,多くの研究者を外部資金で雇い入れることは,研究費の額が限られているため難しいと思います.しかし,山梨大には優秀な若い研究者たちがいます.知恵を出し合って,世界と渡り合える研究を続けていきたいと思います.

山梨大からの発表は以下です.みなさんお疲れ様でした.

本杉宇太郎

 

(プログラム順、敬称略)

【シンポジウム】座長:本杉 宇太郎

市川 新太郎: Clinical application of MRE (英語発表)

【イブニングセミナー】

・本杉 宇太郎:肝硬変における実践的MRプロトコル

【一般演題(口頭発表)】

・掛川 貴史:肝臓におけるComputed DWI:肝嚢胞周囲に発生する高輝度アーチファクトの原因についての検討

・清水 辰哉:Long-term observation of hypovascular hypointense nodules (HHNs) on gadoxetic acid-enhanced MRI(英語発表)

・松田 正樹:Hypovascular hypointense nodules detected by EOB-MRI as a risk factor for multicentric recurrence of hepatocellular carcinoma after hepatectomy(英語発表)

・森 優喜:Bayesian prediction for insufficient liver enhancement in gadoxetic acid-enhanced hepatobiliary phase imaging(英語発表)

・佐藤 兼是:Transient respiratory motion during gadoxetic acid-enhanced arterial phase imaging: a study using accelerated 3D gradient echo sequence(英語発表)

・大宮 慶惠:子宮筋腫に対するMRエラストグラフィ

・佐々木 優:アルコール性肝障害の線維化ステージングにおけるMRエラストグラフィの有用性 

・市川 新太郎 :IVIM-DWIの計算法の比較:肝細胞癌の悪性度診断

・高村 朋宏:NODDIを用いた視神経脊髄炎におけるNormal-appearing White Matterの検討

 

イブニングセミナーにて講演の本杉准教授

20160909MR学会本杉