市川新太郎先生の論文が、Investigative Radiology 誌に掲載

2017年02月27日

市川新太郎先生の論文「Contrast Agent-Induced High Signal Intensity in Dentate Nucleus on Unenhanced T1-Weighted Images: Comparison of Gadodiamide and Gadoxetic Acid」が、Investigative Radiology 誌に掲載されました。 PubMedを見る

 

【論文解説】

造影MRIを繰り返し受けた患者さんは、脳の特定の部分(小脳歯状核、淡蒼球、視床枕)がT1強調像で高信号になることが2014年に初めて報告されました(帝京大学神田先生のグループ)。これは上記の部位にガドリニウムが沈着することによって起こる現象です。
その後の検討で線状のガドリニウム造影剤を反復投与した場合(5回以上)にはT1強調像で高信号になるのに対して、環状のガドリニウム造影剤は反復投与しても高信号にならないことが分かってきました。
様々な造影剤でこの現象が起こるか検討されてきましたが、現在肝臓のMRI検査に広く用いられているガドキセト酸ナトリウム(以下EOB)についてはこれまで報告がありませんでした。そこで今回私たちはEOBを5回以上投与されたことがあり、かつ頭部MRIを撮影したことのある方をピックアップし、線状造影剤のみを反復投与された患者さんを対照群として、小脳歯状核の信号強度を比較しました。その結果、EOB投与群では有意に信号が低いことが示されました。EOBは通常のガドリニウム造影剤と比較してガドリニウム濃度が1/2、投与量が1/2なので、1回の検査で投与されるガドリニウム量は1/4になります。また、EOBは線状造影剤ですが、通常の線状ガドリニウム造影剤より安定性の高い構造を有しているとされています。この両方の理由から、同じ回数の反復投与で比較した場合、EOBは通常の線状ガドリニウム造影剤よりも小脳歯状核の信号が低くなる(=ガドリニウム沈着が少ない)と考えられます。
今後はEOBをさらに多数回投与されたことのある方(例えば20回以上)を対象として検討できればと考えております。

市川新太郎