ECR 報告その2

2017年03月05日

乳癌スクリーニングの未来

日本でも高濃度乳腺(乳腺組織がマンモグラフィ上で高濃度に写り,癌が見つかりにくい状態)に関する世論の高まりがあるが,米国でも高濃度乳腺をマンモグラフィ受診者に知らせる動きが加速している.
Yomi-Dr記事:高濃度乳腺が受診者に通知されていない
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170220-OYTET50037/

実は日本人の大部分が高濃度乳腺と言われており,日本人はマンモグラフィ検診に向かない集団であることが知られている.ではどのようにスクリーニングするべきなのか? 方法は3つある.超音波を併用する方法,最近実用化された3次元マンモグラフィ(Digital breast tomosynthesis:DBT)を用いる方法,そしてMRIである.それぞれに利点と欠点がある.超音波を併用する方法は簡便でコストは最もかからないが,検査技師の技術により精度が大きく左右されるという欠点がある.DBTはマンモグラフィを角度を変えて多数撮像し(CTのように)画像再構成によりヴォリュームデータを得る方法である.高濃度乳腺であっても重なりが少ない画像を得ることができ,小さな病変(特に11 – 15mm大の乳癌)の検出能が有意に向上すると言われている.欠点としては,1検査あたりのデータ容量が莫大(圧縮前は1検査あたり最大5GB!)で導入にコストがかかることが挙げられる.また石灰化検出に関しては従来のマンモグラフィよりも感度が落ちるという報告もある.また10mm以下の病変検出には限界があるようだ.そもそも線維化が少なく周辺乳腺の形状変化を起こしにくい高悪性度乳癌はDBTでも十分に検出できるとは言えない.その点MRIは乳癌を描出するのに最も理想的なモダリティであるが,検査コストがかかること,造影剤が必要であることなどスクリーニングに用いるにはハードルが高い.ただし,これまでの研究において,超音波検診の精度は十分高いとは言えないことも知られており,検査時間を大幅に短縮した造影MRIでのスクリーニングの実用化に向けて本気で取り組んでいる施設も多い.
今回のECRでは,DBTが各社から発売されて間もないためか,Breast cancer screeningのセッションが多数設けられていた.マンモグラフィの検査時に同じ機械で自動超音波検査(自動スキャンニング)を行なう装置も開発されており,今後の乳癌スクリーニングはより高い精度を求めて変化していくであろう.

本杉宇太郎

 

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