体幹部定位放射線治療

体幹部定位放射線治療とは?

最先端のコンピューター技術と高精度の治療装置を駆使したピンポイント照射による精密な治療が、脳だけでなく体幹部の病変に対しても可能になっています。
特に早期肺癌に対しては、手術の代わりになりうる治療法として期待されています。

体幹部定位放射線治療とは肺や肝臓は原発・転移共に癌が発生しやすい部位です。これらのなかで、早期の肺癌や肝癌に対しては、従来は放射線治療よりも手術療法が第一選択とされていました。それは、従来の通常放射線照射法の場合は、病変の周囲に存在する正常組織に障害が生じる可能性があったために、十分な線量を照射することが出来ないという難点があったからであります。
しかし、近年の脳病変に対する定位放射線照射の技術が、体幹部腫瘍に適応拡大されるようになってきました。体幹部の定位放射線照射では病変の輪郭に一致した放射線を多数の3次元方向からピンポイントで照射することにより、病変部には放射線を集中させ”つつ周囲の正常組織に対する被曝を極力抑えることが可能となりました。

体幹部定位放射線治療Q&Aメニュー

どのような病気が体幹部定位放射線治療の対象になりますか
現在、山梨大では原発性肺癌(非小細胞肺癌)と転移性肺癌の患者さんに対して定位放射線治療を行っています。原則的には、単発性(1カ所のみの病変)で、腫瘍の直径が3cm以内の小腫瘍が対象となります。
保険適応疾患ではありませんが、前立腺癌・膵癌・子宮癌などの治療に応用しています。
従来手術が第一選択とされていたを肺癌や肝癌の患者さんに対しても、この治療法が代替になる可能性があります。
体幹部定位放射線治療の実際の手順について教えて下さい

体幹部定位放射線治療は4-10回の分割照射(放射線を数回に分けて照射)によって行います。治療に要する期間は病変の種類にもよりますが、約1-2週間です。

1)体幹部固定具の装着と息止め練習

山梨大学では、腫瘍の位置が照射中に動かないようにするために呼吸を止めて照射します。
正確に呼吸を止めるために、呼吸量を表示する装置(アブチェス)を開発し、患者さんはこの目盛りを見て呼吸を止めます。
呼吸を止めた状態でCTを撮影し、呼吸停止の再現性を確認し、治療計画に転送します。

体幹部固定具の装着と息止め練習

2)CT画像を用いた治療計画

CT画像を用いた治療計画

CT撮影終了後は固定具を外し患者さんは一度帰っていただきます。
CTの画像は3次元治療計画ワークステーションに送られます。
治療を担当する放射線科医の協議に基づいてどのように放射線をあてれば良いかが決定され最先端のコンピュータを用いてピンポイントの照射方法と線量分布を計画します。

3)照射室でCTによる位置あわせ

照射室でCTによる位置あわせ

照射するときは、腫瘍の位置が正確に合うように、照射装置と一体化したCT装置で腫瘍位置の確認をします。

4)放射線の照射

放射線の照射

治療計画に基づき、全4-10回の照射を行います。
照射は固定装置を装着した状態で、多方向から3次元的に行います。
患者さんは、自分で息を止めて、ボタンで合図を送ります。
治療計画の複雑さにもよりますが、照射そのものに要する時間は30分程度です。

体幹部定位放射線治療の効果と副作用について教えてください

効果・副作用共に照射部位と照射方法によって異なります。

肺癌に関しては、腫瘍の大きさにもよりますが、局所制御率が85-95%です。これは手術成績と遜色ありません。

安全性に関しては、現在までに照射を終了した肺癌患者さんは、すくなくとも照射中から直後にかけても全く症状はないようで、照射後2-4ヶ月後に軽度の咳がでる程度の軽い副作用が10人に一人くらいです。

体幹部定位放射線治療
体幹部定位放射線治療

定位放射線治療に関するお問い合わせ

山梨大学放射線科 大西までご連絡下さい。
honishi(アットマークを入力してください)yamanashi.ac.jp
TEL: 055-273-1111
FAX: 055-273-6744